トップメッセージ
2023年度の業績、今期(2024年度)の見通し
2023年度は、第11次中期経営計画の初年度であり、当社の創立85周年にあたる重要な年でした。当社が創業から長きにわたり存続し、社会に貢献してこられたことは、ステークホルダーの皆様のご理解とご協力のおかげです。この場を借りて、お礼申し上げます。
2023年度の業績は、前年に比べて増収増益となりましたが、海外の自動車市場が好調であったものの、国内住宅市場の回復見通しが大幅に下振れしたため、売上高は目標に届きませんでした。しかし、価格改定やコスト削減による収益性の改善と為替差益があり、利益面ではほぼ目標に近い結果となりました。
2024年度の見通しについては、世界的な経済活動の正常化が進む一方で、原材料価格の高騰や中東・ウクライナ情勢の影響などにより、不透明で予断を許さない状況が続くと考えています。
第11次中期経営計画の進捗について
当社は2030年のありたい姿「共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する」に向けて、本中期経営計画に基づき事業領域3つの戦略と経営領域2つの戦略を全社で進めています。初年度は「動」をキーワードに、頭・体・心を動かして、5つの戦略を着実に進めることに重点を置きました。
2年目以降も右肩上がりの計画を立てております。2024年度は、本中期経営計画の成否を左右する年と強く意識し、すべてにおいて攻めの姿勢で挑んでいきます。そして、キーワードを「飛躍」とし、負の外部環境を駆逐するという気概をもって、成長の芽を具現化させることを基本方針としています。そして、これらのさまざまな取り組みの成果が、当社の長期目標である「2030年のありたい姿」の実現に繋がっていくと考えています。
事業ポートフォリオ戦略のねらい
本中期経営計画では、事業ポートフォリオ戦略を導入し、全社で「そだてる:技術開発の拡充」「のばす:注力事業の強化」「ささえる:基盤事業の収益性拡大」という3つの戦略を策定しました。これに基づき、5つの事業セグメントそれぞれに対して、SBU(Strategic Business Unit:戦略事業単位)ごとの具体的な戦略を立案し実行しています。全社共通の「成長性(売上高成長率)」「収益性(営業利益)」「効率性(営業利益率)」という指標のもと、事業ポートフォリオの「見える化」を進めており、各事業部が同じ尺度で評価できるようにしています。
当社は85年余の歴史の中で、変革を繰り返しながら成長してきました。本中期経営計画でも、事業ポートフォリオの見える化を進めることで、全社同じ指標で各SBUの稼ぐ力と成長性を意識するようになり、売上高だけでなく収益力や成長性の改善が必要な分野を明確に把握できるようになりました。各SBUの戦略の進捗度を客観的に評価し、必要な軌道修正や補填策を迅速に立案実行し、本中期経営計画の目標達成を実現していきます。
そして、事業ポートフォリオ戦略の推進により、事業の新陳代謝を進め、新たな価値の創造と持続的成長を実現することを目指しています。

「サステナビリティ」に取り組む意義
当社がサステナビリティに取り組む意義は、当社の事業がお客様の課題や社会課題の解決に貢献することにあります。2030年の目標である「共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する」を実現するためサステナビリティへの取り組みはとても重要です。そのため、本中期経営計画における経営領域の戦略のひとつに位置付け、新たにサステナビリティ基本方針を制定し、全社で取り組んでいます。
サステナビリティ基本方針では、企業の社会的責任(CSR)を果たし、お客様をはじめ、社会から高い信頼を得ることに加えて、技術開発や事業活動を通じて新たな価値を提供し、利益を創出することで企業価値を高めることを目指しています。この実現に向け、私を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。2023年度は5月と12月に開催しました。また並行して、実働組織の「サステナビリティ推進部」を設置し、技術、営業、生産、管理各部門からの代表者で構成される全社横断型の体制で取り組んでいます。サステナビリティ推進部は実務を担当し、サステナビリティ委員会が経営課題として議論し決定したことを、スピード感をもって具現化しています。
このように、当社全体での取り組みを強化し、全社的な意識と連携を促進することで、社会とともに持続的に成長することを目指しています。

「サステナビリティの推進」で重要なこと
当社では、サステナビリティを実現する上で会社としての重要課題である、マテリアリティの策定については、全従業員が課題を理解し納得感をもって進めることが大事だと考えています。2023年度は当社にとってサステナビリティ元年であり、企業の社会的責任(CSR)を基盤としながら、価値創造による社会課題解決を目標とした新たなマテリアリティの策定に取り組んでいます。
マテリアリティの策定はサステナビリティ委員会で検討していますが、全従業員への説明やアンケートを通じて広く意見を収集し、従業員の意見を反映させています。現場の声を重視し、幅広く意見を取り入れることで、現場力を最大限に活かしたマテリアリティを目指しています。策定後は、その取り組みの進捗状況をステークホルダーの皆様に継続的に開示していく予定です。
人的資本・人材活用について
マテリアリティは2024年度内に策定しますが、当社ではサステナビリティが切り拓く価値創造によって社会課題の解決を目指しており、その実現には「人材」が不可欠と考えています。
従前からの「人は財産」との考えから、当社はサステナビリティの一環として人的資本を経営課題として認識し、予測困難な外部環境の変化に対応するための人材育成や多様性の推進を進めていきます。
具体的には、現状有している「信頼関係」「多様な考えの受容」「自律性」を強化しながら、「尖った思考や能力」「イノベーションを生む組織づくり」を育成すべき要素と捉え、取り組んでいます。当社は単体で約400人強の会社ですが、「人は財産」という考えのもと、従業員一人ひとりの能力を最大限に活かす上で適切な規模との認識をっています。むやみに人を増やすのではなく、一人ひとりの能力を最大化する取り組みを行っています。
藤倉化成らしさについて
人的資本経営の他にも、サステナビリティが切り拓く価値創造に大切なことは「自社らしさ」の追求だと考えています。「藤倉化成らしさ」とは、創業から受け継いだ創意工夫の精神と、それに基づく技術力にあります。創意工夫の精神は、時代の新しいニーズに対応し、新たな価値を創造する姿勢として現在に受け継がれています。
どんなに独創的な新製品もいずれはコモディティ化し、社会のニーズが変われば陳腐化していきます。そのため、規模の追求よりも、お客様の要望に対して技術を駆使して上質な価値を創出し続けることが重要と考えています。
当社は、長年の歴史の中で培われた幅広い技術力と蓄積された知見でお客様の要望にお応えします。適度な規模の組織構成でスピード感を生み出し、製品の開発力や生産性の向上、営業力強化を推進していきます。

強みを価値創造に繋げる
社会やお客様に新たな価値を提供し続けるためには、予測困難で不確実な世の中に対応するための多様なアプローチが必要です。当社の2030年のありたい姿は「共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する」ことであり、その実現にはいくつかの重要な要素があります。
まず、共創のためには、多様なステークホルダーと対等に意見を出し合い、当社だけでは成し得ない新たなビジネスを構築する関係性が不可欠です。この双方向の関係性が新たな価値の創造に繋がります。
次に、急速に変化する世の中に対応するために、従来の考え方や仕組みを超えて進化する必要があります。このため、当社は本中期経営計画において、経営基盤の強靭化としてDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成やDXの推進に取り組んでいます。社内で蓄積されたデータを有用な情報として活用し、お客様の要望に迅速に応える体制を整えることを目指しています。
さらに、無限の可能性を秘めた化学の力を最大限に活用し、多様な原材料と技術を駆使して新たな価値を提供することが重要です。技術力は藤倉化成らしさであると同時に、大きな強みであり、各事業部の知見を横断的に活用し、他業界との共創も含めて、多様な価値を創造することを目指しています。これらの取り組みにより、当社は不確実で多様な世の中に対応し、新たな価値を社会やお客様に提供し続けることが可能になると考えています。
ステークホルダーの皆様とともに
当社は、今後も成長・発展を続けるために、ステークホルダーの皆様に対して明確な方向性を示してまいります。当社はサステナビリティレポートを通じて、「私たちはどういう会社で、これから何をしようとしているのか」をお伝えし、新たな価値を創造し、企業価値の向上を目指します。また、情報発信力の向上にも努め、より多くの方々に当社の取り組みを理解していただけるよう、さまざまな手段を活用していきます。引き続き、皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。